弦書房週報 第37号

▶水俣病公式確認から、この5月1日で55年である。チッソ水俣工場・経済産業省・有機水銀中毒という構図と、東京電力福島第1原子力発電所・放射能汚染という構図はよく似ている。水俣病の原因が、工場排水に含まれる有機水銀であることがわかっていながら排水を止めなかったことと、地震津波により発電所が被害を受けて放射能が外部に漏れることがわかっていながら何の対策も講じなかったことは同根である。この55年間、水俣病について国は、一度も本格的な健康調査をしていない。同じように放射能被曝の可能性のある人たちに対して体系的な健康調査をせずにやりすごすのではないか、という気がする。水俣病であることを隠そうとする人たちが多数いたのと同様に、被曝者であることを隠そうとする人たちが多数現れるのではないだろうか。水俣病にも原発事故にも学ぼうとしない国の状況に対して、ある水俣病研究者が「日本人であることが、いやになることがある」とつぶやいていたことが今も心の奥に残留している。『宝子たち《胎児性水俣病に学んだ50年》』(原田正純、定価 2100円)、『なぜ水俣病は解決できないのか』(東島大、定価2205円)

▶自分自身の生活の基盤は安全な場所にあって、原発の危険性を説く人は多い。その一方で、自宅が、危険な場所であるとあらかじめわかっていて警鐘を鳴らし続けている人がいる。『北緯37度25分の風とカナリア』(若松丈太郎、定価 2100円)という詩集は、常に身近に原発を意識せざるをえない生活の中から生まれた。この日本国内でどこで暮らそうと原子力の怖さから逃れることはできない、と同時に、原発が地域社会を破壊する以前の健全な清貧さを記憶にだけはとどめよう、そう詩集のことばは語りかけている。

▶水俣セミナー 7月13日(水) RKK熊本放送の水俣病テレビドキュメンタリーを制作者と観る。エコギャラリー新宿(03−3348−6277)で19:00〜21:00(問合せ=水俣フォーラム03−3208−3051)

▶今だからこそ水俣病に学ぶ 6月11日(土) 講演=原田正純 記録映画「水俣病―その20年」(土本典昭監督作品)岐阜大学講堂で14:00〜16:30(問合せ=水俣フォーラム)

▶水俣・白河展 11月11日(金)〜11月20日(日) マイタウン白河(福島県白河市)で各日、10:00〜17:00(問合せ=水俣フォーラム)

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