連載コラム: 『本のある生活』 2011.12.20

第79回 町民余芸大会を見物

前山 光則

 12月11日(日曜)と12日(月曜)は、知り合いの人たちの忘年会を兼ねた小旅行に加えてもらい、島根県の津和野町で遊んだ。山と山とに囲まれた小盆地である。周辺の山には雪が見える。当然、寒かったが、町を見て歩き、親切に客と接してくれる老舗旅館に泊まり、地酒を味わい、おいしいものを食べて、ゆっくり楽しく過ごすことができた。
 津和野は、森鴎外や西周(にし・あまね)の旧居の他、藩校養老館、安野光雅美術館等、観光名所がある。また、町の菓子屋、漢方薬局、種物店、釣具店、造り酒屋といった店が、いずれもしっとりしたたたずまいである。津和野は戦災に遇っていないから、古い町並みがごく自然に保たれているのだそうで、だからこうした店々を見て歩くだけでも楽しい。
 名所や店巡りだけでは終わらなかった。1日目に、町の催しを見物できたのである。これは実に想定外の収穫で、とにかく何も知らずに、7人、ゾロゾロと津和野体育館の前を通り過ぎようとしていた。ところが、体育館の方がガヤガヤしていて、入り口に「第31回町民余芸大会」と記した立て看板があるではないか。その時、Kさんと目が合った。そして2人ほぼ同時に「面白そうじゃない?」、声を発したのであった。「レクレーション」とか「余興」「隠し芸」と言わずに、「余芸」である。なんだか、とても新鮮に思えた。
 とにかく、受付けしていたおばちゃん達が「どうぞ、誰でも見て行ってください」と気さくに手招きしてくれるので、町民でもないのにみんなで会場へ入り込んだ。すると、中は津和野の人たちでいっぱいなのであった。余芸大会もすでに後半に入っていたが、それでも若い人たちの「ミュージカル・ダンス」や「よさこい」、町会議員さんたちによる「餅つき唄」をかぶりつき付近で見ることができて、いずれもまさに本業・本芸以外の「余芸」、ほほえましかった。餅つき唄の上演後には、見物客への紅白の餅のプレゼントまで行われ、わたしたちもありがたく頂戴した。 
 そして、である。最後に登場した和太鼓演奏が凄かった。男衆だけでなく若い女性も混じっての撥さばき、太鼓の音、すべてなめらか、しかも力強い。ドンドコドンドコと気合いの入った演奏が続き、観衆はその迫力に呑まれていった。これはもう「余芸」でなく、プロ級であった。ドンドコドンドコという音に聴き入りながら、魂が揺さぶられるなあ、神を呼び出すような演奏だゾ、と感じ入った。
 会場から出る時には福引き抽選をさせてくれて、わたしは靴磨きが当たった。紅白餅も景品も、まったく思いがけぬことであったから、他愛もなく幸せな気分になれた。 
 こういう充実した催しを31回も続けてきた津和野町。人口1万に満たないそうだが、ふるさとを支える力が町に漲(みなぎ)っているのだろう。きっとそうであるに違いない。

▲旅館の近くの路地。明治か大正の世にタイムスリップしたような気分になる。こうした路地を歩くだけでも楽しかった

▲和太鼓の演奏。グループ名を「つわの太鼓」というのだそうだ。いかにも練習量豊富のようだし、しかも気合いが入っている

▲焼き鮎。焼き鮎が藁苞(わらづと)に刺して売ってある。清流高津川で捕れたのだそうで、煮てもうまいし、正月の雑煮のダシにも良いとのこと
こんなのもアリマス

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