連載コラム: 『本のある生活』 2013.01.07

第128回 年末年始、久しぶりに

前山 光則

 今度の年末・年始は旅行もせずに家にいたので普通の日々とさして変わらなかったが、ただ久しぶりに連続して酒や焼酎を呑んだ。
 大晦日の夜は年越し蕎麦を肴にイモ焼酎「川越」を啜った。焼酎6・水4の割合で前割りしておいたものを大きめの湯飲みに注ぎ、レンジで40秒ほどあたためるのである。これは宮崎県国富町の川越酒造場の製品で、今まで呑んだイモ焼酎の中でピカ一の味わいだ。この連載コラムに何回か登場しているY嬢は実は熱烈な「川越」ファンで、彼女はこの焼酎の味わいを「ほっこり、もっこりしてますよね」と評したことがあり、実に言い得ているなあと感心したものであった。蕎麦を食ったあとも、紅白歌合戦に見入りながら「川越」の口触り、うま味をじっくり愉しんだ。
 元日には、熊本県山都町の通潤酒造の生原酒「初めのいっぽん」を朝から呑んだ。これに付された蔵元便りが面白くて、それによれば社長の山下泰雄氏は12月に熊本のラジオにゲスト出演した際に一本抱えて行き、マイクの前で喋りながら、アナウンサーにも味見させながら、自分も呑んだ。そうしたら、「すいすい入るので、飲み過ぎて生番組中に完全に酔っ払ってしまい目が覚めたら宿のベッドの上でした(もちろん隣には誰もいません、念のため)」とあって、つい吹きだしてしまった。自分の造った酒への愛着が溢れていて、とても良い話だ。そこで、夫婦で味わってみたところ、まことに気持ちいい香りと口当たりの柔らかさ。酒液がみずみずしく口の中に広がり、喉を通っていく。グイグイ行きたいのを、心を鬼にしてぐい飲み一杯きりにとどめておいた。昼も夜も、一杯ずつ味わった。
 かつて蔵元紀行執筆のための取材で通潤酒造にお邪魔した時、山下氏は「地酒は歩いたらいかんですよ」と語ってくれた。あれは、「地酒」と称しながら全国のあちこちへ売りまくる商法への痛烈な批判だったのだ。「初めのいっぽん」を味わいながら、そうしたことをあらためて思い出したことであった。
 そして、1月2日は、人吉市の焼酎「大和一」を水で少々割った上であたためて晩酌をした。これは大和一酒造元というところが造る逸品で、仕込み水に温泉水を使うのがユニークだ。米製焼酎特有のスキッとした味と香りが愉しめる。去年の早春、笑福亭鶴瓶がNHKテレビ「鶴瓶の家族に乾杯」で突然この蔵元を訪れ、敷地内から温泉が湧くことを聞かされてビックリした様子だったのがおもしろかった。ここは、最近、明治時代の球磨焼酎の造り方を忠実に再現する試みに挑戦している。すごく意欲的なのだ。発売が待たれる。
 こうして正月を呑んで過ごしたが、ただし、量は至って少なかった。大事なのは量より質である。この境地に達するまで、ああ、若い頃から数限りなくしくじってきたなあ……。 今年もどうぞよろしくお願いいたします。

▲年末年始呑んだ酒類。「川越」「初めのいっぽん」「大和一」、いずれも蔵元を直接見学したことがある。呑みながら、それぞれの蔵の人たちの仕事ぶりが熱くよみがえってくる

▲初詣。1月4日、ようやく家族で八代神社(妙見宮)へ初詣に出かけた。元日だったら混み合っていたろうが、4日ともなると参拝客はさほど多くなかった。空は青々として、風もなし。初詣日和(?)であった
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