連載コラム: 『本のある生活』 2014.11.18

第206回 続・初めての佐伯

前山 光則

 前回、甘酒饅頭のことに触れたが、もっと惹かれたのが「ごまだしうどん」である。
 出かける前からインターネットで調べて興味を持っていたので、愉しみだった。だから佐伯に昼少し前に着くと、ごまだしうどんのおいしい店はないかと通りがかりの地元の人に尋ねてみたのである。そしたら、寿司屋を教えてくれるではないか。みんな半信半疑状態で行ってみたところ、本当だった。「ごまだしうどんとアジ鮨セット」、これが800円だそうで、まず6、7分でうどんが出てきた。熱いうどんにごまだしがこんもり載せてあり、他にかまぼこ2切れとネギ。これをかき混ぜてから啜るのだが、ごまだしのややザラリとした感じとツルツルするうどんとが絡み合って絶妙の食感だ。次に出てきたアジ鮨もネタが新鮮でシャリの味も良い。全員おおいに喜んだ。その店のごまだしは、近海で捕れたエソという魚にごまや醤油、味醂、酒、味噌を加えて磨り潰したものだそうだ。一般には、魚はエソの他アジ、タイ、カマス、イリコ等、いろいろ用いられるとのことである。
 なんでも、佐伯地方では昔から家庭でごまだしを作ってうどんや御飯を食べるときに使っていたようで、そういえば、これをあたたかい御飯に混ぜ入れて食べるのもおいしかろうし、鍋料理するときにも応用できるような気がする。後で手に入れた『佐伯ごまだし暖簾会食べ歩きまっぷ』というパンフレットを見てみたら、おおよそ100年以上前には一般家庭だけでなく町の食堂のメニューにも入っていたと思われるらしい。もしかしたら明治28年から翌年まで佐伯に住んだ国木田独歩も、下宿や料理屋でごまだしうどんに親しんだのかも知れない。それははっきり分からないとしても、少なくとも昭和9年頃には佐伯船頭町の「だて」「かねひら」といった屋号の店では確かに供されていたそうである。
 その日の夜にみんなで或る催しの交流会に参加したら、そこでもごまだしうどんが出てきた。昼間の寿司屋のと比べれば物足りない味だったが、メインの料理が鉢盛で油っこいものが多かったので、それよりはずっとマシである。ついついお代わりをしてしまった。
 最初にごまだしうどんを食った寿司屋さんに、次の日の朝から海技教育財団保有の帆船・海王丸を見物しに港へ行った時に再会した。いくつかの出店に混じって、ごまだしうどんや炊き込み飯・アジ鮨等を販売していたのである。船を眺めながら立ち食いしたかったが、朝食を済ませて間もなかったからさすがにはしたないなあと思い、我慢した。その代わり、昼過ぎにまたその寿司屋さんへみんなで押しかけた。嬉しいことに店の御主人が港から帰って来てくれていて、ごまだしうどんをもう一度味わうことができたのだった。
 おいしいものにめぐり合うと、その土地の印象はグンと良くなるなあ。正直、そう思う。
 
 
 
写真①ごまだしうどんを食べた寿司屋

▲ごまだしうどんを食べた寿司屋。店は城山の近く内町という町内にある。味が良くて、佐伯でも評判の店なのだそうだ。実際、うどんも鮨もたいへんおいしかった

写真②ごまだしうどん

▲ごまだしうどん。まんなかに丸く載っかっているのが「ごまだし」で、これをかきまぜてからうどんを啜ることになる

写真③佐伯港

▲佐伯港。朝のうちに行ったので、まだ海王丸は帆を下ろしたままだった。午後、帆を張って見物客に披露するとのことだった。画面の隅にテントが見えるが、案内所や出店の一部分である

 
 
 

こんなのもアリマス

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