第244回 宗像大社辺津宮へ

前山 光則

 福岡に出かけたついでに、宗像大社辺津宮(へつぐう)へ足を伸ばしてみた。
 12月18日、天気晴朗である。娘が車を運転してくれて、朝の8時に福岡市内を出発。国道3号線を1時間余走ると宗像で、そこらから国道を外れて釣川という川に沿って下れば間もなく宗像大社辺津宮である。福岡市内から意外と近いのだな、と知った。元官幣社、とても大きな神社である。本殿の他に第二宮・第三宮・祈願所等々あって、つぶさに拝観していけばだいぶん時間がかかる。全体を巡るのはまた日を改めて行なうとして、さしあたって本殿に参拝した後、神宝館に入ってみた。しかし、この三階建ての建物だけでも古文書・宝物、沖ノ島から出土した祭祀遺品等がこまめに展示されており、見応えがある。たっぷり1時間半かけて見学した。ここ辺津宮だけでなく、玄界灘に浮かぶ筑前大島の中津宮、沖ノ島の沖津宮を合わせての総称が「宗像大社」なのだから、その壮大さには畏れ入る。そのうち大島の中津宮にも行ってみたいものだ。それから、滅多に一般人は立ち入れないらしい沖津宮のある沖ノ島だが、島の周囲は約4キロだそうだ。そこで思い浮かんだのが前回行ってみた不知火海の大築島で、あそこは約3.8キロ。ほぼ同じ大きさだが、沖ノ島が古代から崇められてきたのに対して、大築島は石灰石採掘のために削りとられつづけ、今はヘドロ捨て場と化して……、運の良い島と不遇に泣く島とがあるのだ。
 辺津宮から約5キロ下った釣川河口に「道の駅むなかた」があるが、ここでの海産物の新鮮さ、豊富さ、安さには驚嘆した。まるで魚市場ではないか。娘が「鰹のタタキがあるよ」というので1パック買って、食ってみたが、目が覚めるような新しさ。しかも身が分厚く切ってあって、噛み心地が良い。前夜、福岡市内の居酒屋で「宗像の道の駅へ寄るんだったら、午後では駄目ですよ」とクギを刺されたが、納得できた。聞けば、一般客だけでなく専門の料理人たちも食材を仕入れるため買い出しにくるのだそうで、早めに行かないと売り切れること必定なのだ。道の駅の食堂で昼飯を食っているときに、娘が偶然に知り合いのご婦人と出くわした。その人も、ここへはよく買い物しに来るそうである。
 帰りがけ、すぐ近くの神湊(こうのみなと)や宮地嶽神社にも寄ってみた。神湊港近くの隣船寺には種田山頭火の句「松はみな枝垂れて南無観世音」を刻んだ句碑があって、昔、取材しに訪れたことがある。山頭火がここの住職と俳句のつきあいがあって、生前出来た句碑である。このあたりは、もう少し先に行けば鐘崎港があるし、逆に福岡寄りには津屋崎港。歩いてみたいところがいっぱいだなあ。
 来年も、あっちこっち出かけたい、と思った。今年のコラムはこれでお終い。皆さん、どうぞ良い年をお迎えください!
 
 
 
写真①道の駅むなかた

▲道の駅むなかた。午前9時半頃、つまり店が開いて間もない時間帯だ。しかも平日、それでもこんなに客が多い。いや、逆に、待ちかねて押しかけているのかも知れない

写真②宗像大社辺津宮の本殿

▲宗像大社辺津宮の本殿。午前10時過ぎ、まだ参拝客は少なくてひっそりしていた。天気が良くて、眩しかった

写真③辺津宮神門からの眺め

▲辺津宮神門からの眺め。ここから海の方が直接見えるわけではないが、約5キロ先は道の駅むなかた等がある釣川河口だ。そこから11キロ先には中津宮のある筑前大島、さらに49キロ沖には沖津宮つまり沖ノ島、145キロ先には韓国の釜山。これらが一直線で繋がるのだという

写真④辺津宮の神宝館

▲辺津宮の神宝館。これだけの大きな建物の中に色んなものが展示されているが、全体のごく一部なのだという

写真⑤道の駅むなかたで見かけた野良猫

▲道の駅むなかたで見かけた野良猫。道の駅の食堂で昼飯を食っている時に、ドアの外でひなたぼっこをしていた。野良猫ながら太っており、コセコセしていない。きっと、いつも新鮮な魚にありついているのだろう