連載コラム: 『本のある生活』 2016.05.13

第259回 熊本へ

前山 光則

 5月5日、晴天。子どもの日。午前10時前に車で八代を出発して、氷川町宮原で国道3号線を右折し、国道443号線に入った。
 このルートで美里町を抜け、熊本平野の東南部にあたる甲佐町へ出た。甲佐町から御船町へ行くにつれて屋根を青色のビニールシートで覆ってある家が多くなった。4月14日・16日と続けて震度7の激震に襲われた一帯だ。益城町へ入って被災家屋が急増し、特に中心部に全壊・半壊が目立っていて痛々しい。多くは瓦葺きの家で、かねては趣きのある佇まいだったろうが、今は無惨な姿だ。そして、同じ地域内でも被害がたいへん目立つ区域とさほどでない一帯とがある。断層線に沿っているかいないか、あるいは地盤が固いか軟弱であるか等で差がつくのだろうか。
 1時間20分ほどで益城町の西端、国道36号線との交差点へ至る。ここを右折すれば熊本空港や西原村はすぐ近くだ。左へ行けば、熊本市である。国道443号線を辿ったのは、実は親戚の者が8日から西原村へ震災復旧作業のボランティアに加わる予定だった。八代方面から西原村へ高速道路を使わずに行くルートとしては443号線が最も便利なようだが、震災以後、難なく通れるのだろうかと危惧していた。それでわたしが、熊本へ行くついでがあるから実際に車で通行してみるよ、と約束したのだった。これで大丈夫だとの報告ができる。あとは熊本市へ向かった。 
 熊本市内に入ってから、肝腎の用件はさておいて先ず水前寺公園へ行ってみた。ここの池のことが気がかりだったのだ。駐車場に車を置いてから公園の正面へ回ると、石造りの大鳥居が両側の石柱だけになっている。鳥居の先に石灯籠があったのだが、これも倒壊している。そして公園内へ入ると、すでに大きく報じられていたとおり池は河原あるいは浅瀬の状態になっていた。左へ行って奥の方からは水が噴き出ていて魚たちが泳いでいるが、小さな鮠などは自在に動いていても鯉たちには水深が浅すぎて窮屈そうだ。水も、あれは地下水をポンプアップしているのだろうか。こないだからの地震で地下の水脈に異変が生じたに違いないが、池をたっぷりと満たしていた豊富な湧水の面影はなく、これからどうなってしまうのだろう。熊本城の惨状も何日か前に見て胸を痛めたが、あれは時間と金をかければ復元できよう。しかし地下の水脈には手直しが利かない。池の面積の8割が干上がったという風景を前にして、地震の凄さにしばらくは言葉をなくしてしまった。
 水前寺の池がこんなに激減したのだから、池を水源とする加勢川もそのまた下流の上江津湖・下江津湖もみすぼらしい姿と化したのではないか。そう危惧されたから公園を出て覗き込んでみたが、何と、加勢川はいつもと変わらない流れ方だ! 地下の水脈は、現在、どういうことになっているのだろうか?
 
 
 
写真①益城町中心部

▲益城町中心部。車中から撮影。カメラを向けるのがためらわれるくらいひどく壊れている

 
 
写真②水前寺公園の大鳥居

▲水前寺公園の大鳥居。土産品店の並ぶ入口にあって、かねてはシンボル的雰囲気を漂わせていた鳥居だが、16日の激震で壊れたのだそうだ

 
 
写真③倒壊した石碑

▲倒壊した石碑。礎石のところで碑石が折れている。猫も地震の時はさぞかし怯えたことだろう

 
 
写真④水前寺公園の池

▲水前寺公園の池。池の水は、いつも満々と湛えていたのである。こんなみすぼらしい姿になってしまうのは、今までなかったことに違いない

 
 
写真⑤加勢川

▲加勢川。水前寺公園から流れ出てほんの300メートルもない地点。普段通りの水量に見えた

 
 
 

こんなのもアリマス

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