連載コラム: 『本のある生活』 2016.05.23

第260回 阿蘇へ行ってきた

前山 光則

 5月9日、阿蘇市へ友人S氏を訪ねた。
 午前8時過ぎに八代を出発。国道3号線と443号線を通り、大津町で国道57号線へ出た。ただ、大津も、市街地の外れまで行くとこないだの地震による大規模土砂崩れのため通行止めである。国道339号線(通称ミルクロード)へと迂回し、二重峠を経由して阿蘇の盆地内に入ることができた。その間、ずっと雨。御船町を抜けて益城町中心部を通過する時、あたりは地震被害の最もひどい一帯で、メチャメチャに倒壊したり、歪んだり、屋根に青いビニールシートを被せたりしている家々が雨に打たれていた。ミルクロードでは濃い靄が立ちこめていて視界が悪く、ライトを点けてのノロノロ運転であった。
 友人S氏が居る阿蘇市狩尾というところへ辿り着いて、まずは家屋がなんとか無事であったのでホッとした。無論、物は色々散乱したそうだ。彼が語るには、4月14日の地震はかなり強い揺れだったもののこれといって被害は生じなかった。ひどかったのが16日午前1時25分の「本震」で、激しく揺れたのはいうまでもなく、地震発生後30分ほどは近くの外輪山方面でゴロゴロ、ゴロゴロと音が続いたという。山中の岩という岩が揺れたり、転げたり、互いに触れ合ったりしたのだったろうか。夜の闇の中で山が轟く……さぞかし不気味だったろうと察せられた。
 彼が耕す田んぼまで案内してもらう途中、地面が陥没していた。深さ1メートル50センチほど、幅約20メートルにわたっており、長さはどれほどあるだろう。家屋敷や樹木等で視界が遮られるためよく分からなかった。言うまでもなく、付近の家々は傷んでしまっている。ともかく地面がひどく落ち込んだため、道路も、人が両端に立って運転手や通行人を誘導してやらないと危険である。そして田んぼの方へ行くと、あたりは広々としている。雨が降り、靄が立ちこめるのでよく見えないが、南の方角にはいわゆる阿蘇五岳が連なり、背後に外輪山が屏風のように横たわる。普段はほんとに気持ちいい風景であろう。S氏の田んぼは全部で4枚、20反。田んぼ全体が若草に覆われていて初めはよく見分けられなかったが、よくよく目を凝らすと亀裂が走っている。「あれが?」と訊くと、彼が「そぎゃんです」と答え、とにかくこれでは水漏れがするため田植えができないという
 S氏の家へ戻ってから、裏の方へ連れて行かれた。そこには大きなビニールハウスがあって、中に稲の苗がビッシリ置かれていた。これら全部が田植えできないままとなってしまうのか……。自らの働く場所を「とんぼとかえる農場」と名づけて、夫婦でせっせと耕してきたS氏、このたびは大自然からこういうまさかの仕打ちを受けた。その胸の内を思うと、言葉が出なくなってしまった。
 後で2人で阿蘇神社に参拝したが、楼門も拝殿も崩壊していた。実に天変地異は怖い。
 
 
 
写真①地面の陥没

▲地面の陥没。道路を車が通る時には、ソロリソロリと行かなくては危険である

 
 
写真②田んぼに亀裂

▲田圃に亀裂。地面に亀裂の入っている個所は、この他にも阿蘇市内のあちこちで見かけた

 
 
写真③阿蘇神社

▲阿蘇神社。ものの見事に倒壊した、という感じである。それでも参拝に来ている人はだいぶんいた

 
 
写真④壊れる前の阿蘇神社

▲壊れる前の阿蘇神社。2013年6月7日撮影。神社の前を参道が横に通っており、こういう「横参道」は珍しいのだそうだ。参道の南(左手)は阿蘇火口を、そして北(右)は国造神社へ向いているのだといわれている

 
 
 

こんなのもアリマス

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