その6 「ご免、ご免! ドイツアヤメ君」

 やっと気温が上がってきた。野菜類も花もぐんと勢いを増す。
 だが、それ以上に雑草の勢いが凄い。当たりまえのことだが、肥料をやった花や野菜の周りの勢いが一段とよい。
「お前にやるつもりじゃなかったんだけどなあ」とぼやいてみても仕方ない。
 で、草とりだ。が、ふと雑草の山をふりかえって見れば、草山からジャーマン・アイリスがあたまをのぞかせ、膨らんだ蕾が「オーイ、助けてくれい!」と呼んでいるではないか。
「おう、もうそんな時期か。悪かった、わるかった」と、急遽アイリス君の周りの草を刈り、引っこ抜いて陽当たりよくしてやる。
▼草をとってすっきりしたジャーマン・アイリス

 このジャーマン・アイリスなる宿根草、なんとも健気、というかドイツ原産らしく強健。寒さも霜もヘッチャラで越冬。どこでも育って肥料も求めない、というより多肥を嫌う。爺のような怠け者にはもってこいの花だ。
 それでいてなかなかに優美な花を開いてみせる。あえて難をいえば、一日花だから咲いたと思ったら、すぐしょたれてしまうことか。いやそれでいい、それでいい。繁殖力旺盛で庭や畑のあちこちに広がっているから、次々に花開くから。
 
山吹の黄色が緑のなかにまぶしい。木蓮はそろそろ終わりか。チューリップも花弁が大きく開き、まもなく散り始める。
 かわってツツジがチラホラ咲き始めた。藤棚のフジも蕾がだいぶ膨らんできた。まるで毛虫のようなぶかっこうなかたちの蕾だが、これが開けば鮮やかな色を見せるはずだ。ボタンとシャクヤクも順調、今年も期待できそうだ。
 彼らの体内時計の正しさにはあらためて感歎、脱帽だ。

 これじゃあ看板に偽りあり! 花にばかり手をかけて野菜はほっぱらかしかよ、と叱られそうだ。でもこの時季はどうしてもなあ……。
 草とりの合間には夏野菜の苗床つくりもちゃんとやっているのだよ。
 そろそろ虫が出てくる頃。防虫対策もやらねばなあ。夜盗虫、あいつらはひと晩でなんでも食い荒らしてしまう。それにナメクジ。こいつが葉物野菜をダメにする。イチゴの実まで食っちまうから。

ちょっとかわったチューリップを植えてみたら、通りがかりの人が
「おっ! こりゃなんだ?」と振り向いてくれて爺は満足?