その16 蝉の大合唱が消えた?

 暑い、暑い。連日35度を超すと、間もなく後期高齢者の爺にはコタエる。
 お盆前には何とか畑の雑草を征伐しておきたいので、日の出とともに畑に出る。
 午前5時半、この時間にはまだ蚊もあまり襲ってこない。でもゴマ粒くらいの毒虫がときおりチクリとシャツの上から刺してくる。これは痛い。
 こうして6日、塀沿いに幅2メートルばかり茂っていた雑草を何とか取り除く。と言っても日照り続きで地面は堅くなっているので、結構骨が折れる。刈り取るだけではすぐに茂るので、なんとか根っこから掘ろうとするからだ。
 草や木の葉裏には蝉の抜け殻がたくさん貼りついている。地面のあちこちに彼らの脱出口もみえる。
 木の下を通ると、一瞬鳴いて爺に体当たりする奴、逃げ惑う奴……。だから例年どおり相当数のせみが畑の木々にはりついているのは間違いない。
 ところがもこの時間帯、蝉はあまり鳴かない。いつもなら日の出とともに、うるさいほどの大合唱が始まるはずなのに。
 いや朝だけではない。夕方もあまり鳴かない。全くというわけじゃないが、あの大合唱ではない。
 蝉が変わった? それとも今年は酷暑で特別? 気になって仕方がない。
 この時期になると、ひっくり返ったまま、元に戻れずもがいているのも増える。ひっくり返してやっても、もうあまり飛ぶ元気がない。
 やがてその死骸をアリたちがせっせと運んでいく。無情は常のならい。
 とは言うものの、今年の夏、鳴かない蝉は気にかかるなあ。

▲木や草の葉裏には抜け殻がびっしり