その47 天仰ぎやがてうつむくソラマメよ

 ボタンが散って、いまはシャクヤクが満開だ。白、ピンク、赤の大輪が新緑に映え、思わず「眼福、ガンプク」ともらしそうになる。
 純白のシャクヤクの向うは、これまた例年になく元気のいい蔓バラが満開。ピンクの花が次々に開いては散っていく。このコラボレーションにも思わずうっとり。
 いったいに今年の初夏の畑の花たちは大きく、鮮やかな花弁を開いてみせる。
 豪雪、低温続きでちじこまっていた花たちが、気温の急上昇で一気に爆発するように花開いた感じ。彼らは気温と日照に実に敏感だ。

 花の季節のうつろいを眺めていると、柄にもなく、自然とあの小町さんの歌が思い浮かぶ。

   花の色はうつりにけりないたずらに わが身よにふるながめせしまに

 花はむろん桜。はかなき男女の仲をうたったというのだが、爺にはそうは映らぬ。次々にいろんな花がひらいては散っていく。ぼんやり眺めているうちに爺は確実に歳をとっていく。そんなふうにしか思えんのだがなあ。

 畑ではソラマメがまもなく収穫どきを迎える。ソラマメ(蚕豆、空豆)、当地では夏豆という。空に向かって莢が伸びるからソラマメ、夏にできるから夏豆。
 小さなチョウチョのような花のあとに莢ができる。こいつがグングン伸びて空を仰ぐ。やがて莢は水平になり、下を向く。収穫どきだ。塩茹でした豆は、初夏のビールのつまみの定番。甘くてちょっぴり生臭い香りが季節を運んでくる。

(出雲在・三原 浩良老生)

▲新緑に映える白のシャクヤクと深紅のつるバラ

▲収穫まじかのソラマメ(上向きの莢が下を向いたら収穫)