その61 貸し農園満杯の背景は?

 4、5日留守にして帰ってみたら、金木犀はみんな落花。こそとも香りがしない。なのに夕顔はもう一ヶ月以上も咲き続けている。人それぞれ、花それぞれである。
 
 近所の知り合いが「もう大根植えた?」と聞く。「そりゃもう。一回間引いたよ」と言うと、「やッ、遅かりし!」とあわてる。
 別の知人が「100本は植えた?」と聞く。「とんでもない。30本くらいかな」と言うと、「へえー、少ないんだ」と笑われた。
 そんなに大根ばかり植えてどうするんだろう。と思っていたら、かみさんの友人が大根の間引き菜を大量に持参した。白和えになって夜の食卓に並ぶ。
 
 当地は江戸時代に開墾されたところで、戦時中までは専業農家が多かった。ところが、いまでは専業農家はほとんど消えて、住宅密集地になってしまった。
 コンビニの裏に大きな貸し農園がある。もとの専業農家が貸し出している一区画は2、3坪くらい。でも数年前から満杯状態が続き、空きが出ない。
 ぶらぶら散策して話を聞く。たいてい団塊世代よりうえのおじさんたちが精をだしている。Uターン組が多い。
 
 「畑がやりたくて帰ってきたけど、土地がなくて」
 「離島に行きたかったが、かみさんが反対でねえ」
 「もっと広い畑がほしいけど、どこも一杯だわ」
 まあ、みんなまるでなめるように土をいじっているから草1本生えていない。野菜のできばえも私よりはるかに上だ。
 カルチャーセンター園芸部会で実習して臨んだという知人は、狭い貸し農園に飽き足らず、山奥の休耕地を借りて弁当持参で毎日車ででかける。「じゃあ、また夕食で会おう」が出かけるときの、かみさんへの挨拶だそうな。
 猛暑もあって大根はいま端境期。「1本400円じゃ、とても買えないわ」と主婦は嘆いている。
 世はTPPだFTPだと大騒ぎだが、なんだかおかしいなあ。

(出雲在・三原 浩良老生)

▲満杯だという貸し農園