その72 花にかまけて野菜は手つかず

 快晴が二日続きそうだというので、誘われて観桜一泊旅行としゃれ込んだ。
 行先はサクラを求めて隣国の伯耆・因幡から備北まで、行程の標高差ざっと400メートルくらいか。
 今年はこの地方雪が多かったから、どこも蕾はまだ固い。峠にはまだ積雪が残る。それでも山肌には自生のコブシが真っ白い花を点々と咲かせていた。
 山をおりるとさすがに3分咲き、5分咲き。花まつりがはじまっているところも。
 どこでも城跡のまわりにはたいていサクラが植わっている。この地方のサクラの根元にはたいてい毛利・尼子の戦跡がある。「毛利にやられた」「山中鹿之介に討たれた」との標識が目立つ。
 帰路、出雲路にはいると、川土手の並木はほぼ満開で楽しませてくれた。
 
 ところが帰ってみると、わが家のサクラは落花しきり。ホント、三日見ぬ間のサクラかな、であった。
 アンズも散ってしまい、かわってピンクのコブシが満開。それよりも畑や庭のあちこちでは小さな花たちが「おーい、ここにもいるよぉ」と自己主張している。
 雑草に囲まれてムスカリのブルーの花が林立、5~60センチの背丈の桃が今年も花をつけた。庭石の裏側では椿の小さな枝がひっそりと満開。
 すっかり忘れて手入もしなかった宿根草たちが律儀に咲いてくれる。感心な花たちだ、と思わず褒めてやりたくなる。
 花にかまけて畑を忘れているあいだに、野菜の苗とタネたちが「早く植えろよなあ」と催促をかましてきた。
 でもなあ、明日からまた天気は下り坂だっていうしなあ。

(出雲在・三原 浩良老生)

▲水仙の引立て役じゃないよと、ムスカリも満開

▲庭石の裏側ではひっそりとツバキが満開