◆氏は世界と対峙する自分の場所を一歩も動かず、しかもしなやかに自分の頭で考え抜いたことだけを語っている。たとえば、国家について。…国家の一員である責任をなにがしかかかえつつ、「もう一つのこの世」への憧れを抱く人々がさまざまなつながりを作り出していくことが重要なのだという。
◆近代は自立した個の尊厳を根拠とする思想を生んだ。近代のこの達成を手放すことなく、いかにして生活の場でグローバリズムの流れに抗していくか。
反近代やポスト・モダンの思想は実のところ、近代をまるで超えてはいない。渡辺氏が展望する「近代の超え方」は、先に指摘した国家をめぐる思考に鮮明に表れている。
◆対談というスタイルのよさが出た本である。『逝きし世の面影』の著者自身が、この得がたい本の視点と射程を分かりやすく解説している趣がある。(奥武則・法政大学教授 熊本日日新聞/2003年8月31日付)
◆渡辺氏が一貫して語っているのは、抽象的な観念によって社会を計画的に作り替えようとする思想に対する断固たる否定。イスラムのテロも、理念によって人々を指導しようとしている点でブッシュと同根と喝破し、それを養護するのは思想的犯罪と言い切る。
◆「近代をどう超えるか」という問いへの明確な答えは用意されていないが、そのヒントは随所にちりばめられている。(毎日新聞 「新刊じゃっく」/2003年9月5日付)
◇本書での対談者のお一人、榊原英資氏が日本経済新聞「半歩遅れの読書術」で本書を紹介しています。(2003年9月7日付)
◆<僕は、環境破壊とかいうけれども、それ以上に人間の心が破壊されるのが問題ではないかと思っています。根っこを断ち切られていく。自然との根っこ、人間の根っこですね>…江戸の視点からの近代捉え返しから、水俣と石牟礼道子の読み方、9・11テロとグローバリズム、知識人のあり方まで、近代を超える思想を問う著者と7人の論客との対談集。立場の異なる対談相手を通して著者の主張が鮮明に。(出版ニュース/2003年11月下旬号)
◆グローバリズム=米国という思いこみにひそむ欠落や、小さなものや地域性をどう守るか等々考えさせられた。(佐伯修「今月の本」 旅行人/2003年12月号)