紹介
海の上の家族空間として存在した家船(えぶね)。古来、九州西北域=西海で、長らく漂白民として暮らしてきた「海人たち」の世界を記録した一冊。最後の海人たちへの聞き書きと文献から浮かびあがる、西海海人たちの歴史と系譜。「白水郎(あま)―海夫―家船」という海人の系譜は、九州西北海域でのみ見られ、この海域を俯瞰するだけで、海人たちの壮大な歴史が一望のもとに収めることができる。
目次
Ⅰ 最後の家船系漁師たち
西彼杵半島というところ
九州家船の本拠地へ
「ホコ突き」と「潜り」
消えゆく伝統的漁業
「海の民」は移動する
「カズラ網」とは何か
二つの追込漁は出合ったか
「キノコ雲」から「流れ船」まで
漂泊民と定着民のはざま
Ⅱ 西海海人の系譜をたどる
西海家船の分布と系統
海の上の家族空間
カエキ──交換する世界
大村氏と家船、貴種と漂泊民
「白水郎」「土蜘蛛」とは何者か
中世「海夫」と倭寇世界
浮上する西北九州の海人たち
Ⅲ 石鍋と南島をつなぐもの
眠っていた石鍋遺跡
山中にうごめく「異人」たち
石鍋は南へ向かった
琉球社会の劇的転換
石鍋を運んだ人たち
海夫と石鍋は出合ったか
著者
東 靖晋
あずま・やすゆき
1946年兵庫県淡路島生まれ。中央大学法学部卒業。68年毎日新聞社入社。熊本支局長、編集委員などを経て、2006年定年退職。著書に『境のコスモロジー 市・渚・峠』(海鳥社)『西海のコスモロジー 海人たちの時間と空間』(弦書房)。共著に『漂民の文化誌』(葦書房)ほか。
弦書房より発行の関連書籍
鯨取り絵物語 | |
ニュースの民俗学 東靖晋コラム集 |