市原猛志
【ミツカンミュージアム(2015年竣工)愛知県半田市】
半田市で開かれた赤煉瓦ネットワーク全国大会の二日目は、半田市中心部の散策と博物館視察が行われた。その際に歩いて巡ったのがこの半田運河のほとりである。ここでは半田運河、という名称で表記しているが、実際は自然河川である十ヶ川の下流域に相当する。江戸時代に入って現在の半田市街に相当する市街地が形成されると、この河川を利用して知多半島の特産品が江戸まで船で運ばれていった。人工の運河とは異なり、たびたび河川の氾濫に見舞われていたが、そのたびに中埜家や盛田家をはじめとした半田地域の有力者が開削などの改修を行った結果、十ヶ川は半田運河という名称で広く知られるようになった。
半田市の中心部にある中埜酒造やミツカンなども、この河川を古くから輸送のために用いており、現在でもおなじみのミツカンマークのついた黒壁の倉庫群が連なっている。醤油蔵や酒蔵が並ぶ周辺域は散策ができるようになっており、またかすかに漂うお酢の香りは、環境省の「かおり風景100選」に選ばれるなど、産業遺産が好きな人間以外にも観光地として多方面から評価されている。