file81 陸軍兵器庫(石川県立歴史博物館)

市原猛志

【1909年~1914年/石川県金沢市/煉瓦造2階建】

 金沢市には歴史的な建物が多く遺されていることは、すでに前回でも述べたとおりであるが、それらの多くが博物館や資料館などに活用されていることが、街への滞在時間をより長くさせている。その筆頭的施設が、県立博物館が入居しているかつての陸軍兵器庫である。終戦後金沢美術工芸専門学校(のちの金沢美術工芸大学)による校舎としての使用を経て、1986年より歴史博物館となっている。転用時点で切妻部分に手を加えていないからか、または現在の博物館としての用途の関係上、収蔵品の日光を嫌がる保存の観点から窓が常に閉じられているため、最初に訪れた際はこの建物群が活用されているとは思っていなかった。それだけ古式ゆかしきたたずまいと博物館としての内部利用とをうまく両立しているとも言えよう。
 1980年代という早期からの建物転用事例としても注目されるが隣地には国立工芸館の移転を控えており、地域の歴史的空間に厚みが増すことが期待される。 

         

▲石川県立歴史博物館として活用されている陸軍兵器庫

 
 
         

▲建物群をつなげる渡廊下に博物館入口を設ける

 
 
         

▲遠くから見ると倉庫用途のままのように見える