市原猛志
【1900年(1880年?)/京都市伏見区/煉瓦造平屋建】
稲荷駅に隣接した煉瓦造の建物が、ランプ小屋建築としては日本最古との話を伺って伏見稲荷参拝のついでに訪れてみた。その割には、伏見稲荷の圧力に押されて、というべきか、今ひとつ知名度が高くなく、煉瓦造の建物ではあるものの、延床面積8平方メートルと小規模な作品であるため、常設の見学施設となっておらず、その取り扱われ方も写真の通り良いとはいいがたい。これは日本における歴史的建造物全般で時折見られることだが、古い構造物は古ければ古いほど価値が高く、新しいものは常に古いものより価値が低くみられる、典型的パターンではなかろうか。近年の研究では、駅としての開業後一度建て替えられており、実はランプ小屋としても最古の施設ではないとの論文が発表され、価値に対する信憑性が揺らぎつつある産業遺産であるが、いずれにしてもこの煉瓦造構造物が明治期から長年にわたり東海道本線の物流の歴史を見守り続けてきた施設であることは間違いない。