市原猛志
【旧常田(ときだ)館製糸場施設(1905年竣工)/木造5階建】
上田市というと、歴史好きな方々にとってはまず昨年の大河ドラマが記憶に新しいところだろう。ここで上田城についていまさら取り上げても、それは私の役割ではないように思う。今回は温泉旅行を兼ね、かねてより気になっていた蚕糸産業に関連した遺構を見に行くことにした。
上田駅から南西方向にしばらく歩くと、城郭と見紛うばかりの白壁多層の建物が目に付く。これは信州の製糸産業を支えた五層の漆喰造繭蔵倉庫で、2012年に敷地内にある他の6棟の施設とともに、国の重要文化財に指定された。建物としては、現在もスチロール製品の倉庫として使用されており、工場内の現役倉庫として使用されていることは非常にほほえましい。後に作られた鉄筋コンクリート造5階建の繭倉庫も見ごたえ充分であり、併せて見学しておきたい。
これら施設は現在国重要文化財に指定され、電子産業に業種転換した笠原工業が管理しており、私にとっての上田城とは、こちらの繭倉庫のほうがしっくりときそうだ。