file29 旧登米小学校

市原猛志
 
【1888年竣工/宮城県登米市/木造2階建/国指定重要文化財】
 
 登米地区の中心施設である観光物産館の隣地に小学校が建てられているが、その広い敷地の一角に、コの字型の平面構成をした荘厳な小学校建築が遺されている。現在は教育資料館となっている旧登米小学校校舎は、他の建築群と同じく戦災と東日本大震災を耐え抜いた大規模木造建築で、近年補修工事が終了したばかりである。
 校舎は1、2階ともに片側に廊下が置かれ、生徒を見守りやすい格好となっている。両翼部1階部には、「六方」と呼ばれる複雑な屋根構造を持った入口部が設けられており、生徒の出入口となっていた。玄関部分には渦巻き文様を模した「イオニア式」が変形したような柱が取り付けられているが、その姿はどこかユーモラスであり、様式を積極的に受容する明治期ならではのおおらかさを感じさせる。
 近代建築にかかわる研究を行っている者ならば、一度は訪れたい施設というものが全国の各所にあるが、この小学校建築は間違いなくその巡礼対象と言えよう。国の重要文化財に指定されていることも、納得の名建築である。
 
 
 
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▲小学校校舎は教育資料館として見学できる