市原猛志
【1964年/山口県宇部市/鉄骨造櫓設備】
全国石炭産業博物館等研修交流会の2017年度大会は山口県宇部市で開催されたのだが、休日の予定と全く合わず、この年はほぼ1日のみの参加となった。夕食の時間に飛び入り、深夜にまで及ぶ勉強会の後に翌日行われた宇部興産の工場視察と宇部港クルーズを見学することができた。宇部興産は宇部炭田に埋蔵する石炭資源の採掘から始まった石炭化学コンビナートの中核的企業であり、現在でも石灰石運搬のための専用道路をはじめ多くの産業遺産が所在するが、今回の見学会では事務施設に隣接して遺されている炭鉱稼働時の竪坑櫓を見学した。
電車竪坑の名の由来は、坑内の電車坑道とこの竪坑とが1957年に接続されたことによるもので、竪坑の機能とは特に関係があるわけではない。戦後に作られた竪坑櫓ということもあり、すっきりとした形をしている。坑内での石炭採掘が行われなくなった現在は、石炭産業から始まった宇部興産の歴史を現在に伝えるモニュメントとして保存されている。