file84 京都工芸繊維大学本館

市原猛志

【1931年/京都市左京区/鉄筋コンクリート造3階建)】

「保存再生学特別研究会」という建物に関与している人間にとっては魅力的なイベントが開催されるため、京都工芸繊維大学に赴く。会場である大学は1899に設立した京都蚕業講習所及び1902年開設の京都高等工芸学校を源流としており、国立大学ながら産業技術に特化した特性を持つ、私の行っている研究とも何かと縁の深い大学である。
本館の建築は戦前にさかのぼり、鉄筋コンクリート造タイル張りの建物は現在でも大学法人の本部が入居するなど、松ケ崎キャンパスのシンボル的建築となっている。褐色スクラッチタイルを全面に使用しているところなどは昭和初期の流行をそのまま表す一方で、正面入口部分上層階で用いられた水平連続窓はモダニズム的な要素が見られ、設計者本野精吾が意識したであろう高等教育機関としての先進性をも見せている。建物とは直接関係はないが、大学内にある美術工芸資料館は産業技術史に関係する展示が多く、来訪の際はぜひとも見ておきたい施設だ。 
 
 
 

▲京都工芸繊維大学旧本部(現3号館)

 

▲同じく国文化財に登録されている倉庫棟

 

▲キャンパスの建物群は初期建築群の色合いに合わせ作られている