私たちの生活(それが快適かどうかは別として)は先人のさまざまな努力と犠牲の上になり立っている。特に〈戦争〉をとりまく膨大な命とひき替えに、どのような社会の変化をもたらしたのか、ということは常に忘れてはならないだろう。あの日あの時、なぜ戦死せねばならなかったのか、その行動と死に意味はあったのか。本書では、その記憶を宿すさまざまなモノから現代史を再考する。*短距離ランナー、無言館の絵、映画「無法松の一生」、引揚げの碑、復権の塔、戦争考古学等から歴史の真実に迫る。
第一章 身近にある戦争の記憶
1 戦火に散った天才短距離ランナー
旧制中学時代からタイトルを総なめ/昼寝をしてロサンゼルスオリンピックを逃す/ベルリンオリンピック/いざベルリンへ/戦火の中で/戦地へ
2 無言館と故郷のえにし
偶然の出会い/やはり自分の手元に置いておきたい/夫の両親の反対を押し切っての結婚/宇土中学で美術教師に/大村大空襲/絵を無言館に預けたい
3 故郷にもあった「引き揚げ」
満州から疎開/北朝鮮へ疎開/北緯三八度線をめざして/日本へ
4 満州、朝鮮半島、満蒙開拓団、そして佐世保
写真見合い/ソ連が攻めてきた!/引き揚げ船で水葬があった/満州への思い/北朝鮮からの引き揚げ/佐世保上陸の地で/満蒙開拓団の悲劇
5 「復権の塔」と沖縄、そして命の尊厳
沖縄・ハンセン病との出会い/沖縄を追われる/復権の塔へ
第二章 検閲で切断された映画『無法松の一生』
1 検閲に翻弄された映画
悲劇の映画/削除された未亡人への告白/撮影監督 宮川一夫の思い
2 園井恵子と「桜隊」
万能女優/苦楽座と桜隊/俳優森下彰子と「無法松」
第三章 古都・奈良に遺された戦争の記憶と戦争遺跡
松代大本営に匹敵する屯鶴峯の地下壕/行政の積極的な関わりが急務/奈良山中で捕らえられた捕虜/「日本人もアメリカ人も同じ人間」/イギリスから返還された日章旗/「負の遺産」で終わらせないために
第四章 未来に記憶を伝えるために
1 市民が動く平和への活動
絵本を通して平和を伝える/大刀洗飛行場と特攻/学窓を追われた大学生たち
2 戦争(戦跡)考古学の起こり
沖縄が戦争考古学の始まりだった/奇跡で生き残った沖縄戦/考古学が核廃絶に発信/遺跡から見た本土決戦/破壊された戦争遺跡/記憶も遺跡も不安視される時代に
3 戦争体験者第二世代の使命と重荷―—負の歴史を聞き出すための力
戦争のトラウマは今も人を苦しめる/そして故郷―—ここでも捕虜虐待があった/未来に紡ぐ――工夫の一例
澤宮 優
1964(昭和39)年、熊本県生まれ。ノンフィクション作家。青山学院大学史学科卒、早稲田大学日本文学専修卒。『巨人軍最強の捕手』(晶文社)で第14回ミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。昭和の庶民史をテーマに幅広く執筆。主な著作に『昭和の仕事』(弦書房)『イラストで見る昭和の消えた仕事図鑑』(原書房)『廃墟となった戦国名城』(河出書房新社)『「考古学エレジー」の唄が聞こえる――発掘にかけた青春哀歌』(東海教育研究所)『ひとを見抜く――伝説のスカウト河西俊雄の生涯』(河出書房新社)ほか多数。
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