「動物登場」書評から

大部分は東西の近現代の小説、それもいわゆる娯楽小説から興味深い主題を取り出しており、読んでいて肩が凝らない。
 豊富な読書体験が、連想が連想を呼ぶといった風で、動物への愛についての考察が異形の人間への愛、一般に知られたくない愛といった主題へと、それぞれ作品例を挙げながら変奏され、深められていく。
立論にはいちいちうならされるが、何より人間性の暗部に目を背けず、本音で論じているところがいい。学者であるにもかかわらずと言うべきか、さすが文学研究者だけあってと言うべきか、著者はなかなかの人間通、世間通であるようだ。(読売新聞/2004年4月20日付)

◇『サンデー毎日』2004年5月2日号「いのちの本棚」欄(動物に関する本を集めてあります)で紹介されました。

生きものが好きで本も好きという人にとって、魅力ある一冊だ。古今東西の本や映画に登場する動物を通して、その生態はもとより、人間心理、男女の問題、社会背景まで語られ、楽しくて含蓄がある。
この一冊で何冊分も得した気になるのは、大量で的確な引用抜粋により、数々の未読の本に誘われるほかに、むかし読んで忘れていた作品を再確認して二度楽しめるからだ。…本書は大学の授業ノートがもとになったとあるが、こんな授業をわたしも受けたかった。(西日本新聞・「風車」欄/2004年5月20日付)

『シートン動物記』『もののけ姫』など古今東西約200の小説や映画を取り上げ、動物とヒトとの微妙な関係に迫る。…(著者は)専攻は江戸文学で、(略)今回の『動物登場』では専門以外の知識も動員し、描かれた動物像を丹念に読みといている。
(毎日新聞/2004年5月21日付)

読み進むと、人間が動物に与えた悲惨さに思いが及ぶ。しかし、「動物はどんな悲惨な現実と未来しかなくても、絶望はしなかった」と、終末論の中での希望を語る。(朝日新聞/2004年5月22日付)

動物を描く作品には、もう一歩踏み込んだ読み方があることを教えてくれる。(出版ニュース/2004年7月中旬号)