弦書房週報 第32号

◆第37回大佛次郎賞に渡辺京二氏の『黒船前夜』(洋泉社)が選ばれました。開国以前の北方で日本・ロシア・アイヌがどのように外交を展開してきたのか、今に続く北方領土問題の原点をあざやかに描いています。『幕末のロビンソン―開国前後の太平洋漂流《ロビンソン・クルーソー・ゲーム》』(岩尾龍太郎、定価2310円)、『江戸という幻景』(定価2520円)、『アーリイモダンの夢』(定価2520円)、『近代をどう超えるか―渡辺京二対談集』(以上、渡辺京二、定価1890円)
◆青年海外協力隊(通称JOCV)に参加すると、2年間、発展途上国で活動します。仕事の内容は多岐にわたります。私自身もネパールで1987年〜89年、理数科教師という職種で参加活動しました。当時、問題になっていたのは意外にも帰国後の日本への再順応がうまくいかない隊員が少なからずいるということでした。協力隊事業での仕分けが問題になっていますが、お金のことよりも経験を積んだ若者たちに活動の場を提供するということの方を重要視すべきなのではないか、と思います。《青年国内協力隊》という組織があってもよいのではないか、と考えたりします。12月15日付の「協力隊かわら版」に、「国際協力から国内協力へ」という記事があり、海外での経験を地域おこしといった国内での活動に確実に生かすことができる、と報告されていました。『素顔のカトマンドゥ―日本が教えてくれた故郷』(ラジャ・ラトナ・スタピット、定価1890円、1月刊)
『幕末のロビンソン―開国前後の太平洋漂流《ロビンソン・クルーソー・ゲーム》』(岩尾龍太郎、定価2310円)の書評から。〈「漂流者は帰れなかったのか、帰らなかったのか」という著者の問題提起は鋭い。これは今後の日米中の交流の上でも有効な視点となるだろう〉(熊本日日新聞・12月19日付、平川祐弘氏評から)海外からの留学生たちを現代の漂流者と呼ぶならば、その価値を生かせるかどうかは、受け入れる国の視野の広さによるのではないか、と思います。

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