file8 旧毛馬閘門

市原猛志

【旧毛馬閘門(1909年竣工)大阪市北区】
 
 産業考古学会は1977年に設立された学際学問を取り扱う学術団体で、来年設立40周年を迎える。11月にこの学会の全国大会が開かれるため、急遽大阪に向かった。初日はプレ見学会という名称で、大阪界隈の水に関連する施設を見て回ったが、その中でいちばんの見所がこの毛馬閘門であった。
 現在の淀川と1909年に河川改良工事でバイパスが作られる前のかつての淀川水路であった大川とを結ぶ毛馬閘門には、淀川改良工事の際に作られた煉瓦遺構が現存している。現在の毛馬水門に隣接して、1907年に完成した毛馬第一閘門と洗堰(1910年完成)が遺されており、これらは2008年に国の重要文化財に指定されている。
 新旧の閘門が並列して現存し、一般に公開されているという事例はかなり珍しいが、ここだけではない。世界中の産業遺産を逍遙する研究者の何名かは、説明の際に気付いていたようだが、ドイツ・ルール工業地帯のヘンリヒェンブルグにある運河閘門もまた1899年にドイツ帝国が威信をかけて造った閘門と1920年代そして現役の閘門とが並列して存在し、現在は運河博物館として、こちらも一般に公開されている。
 
 
 
毛馬閘門

▲旧毛馬閘門(1909年竣工)大阪市北区