市原猛志
【1952年以降建造/長崎県長崎市池島/鉄筋コンクリート造7階建他】
明治維新とともに多くの炭鉱がつくられた九州においても、21世紀まで長く稼動を続けた炭鉱はたったひとつであった。その最後の炭鉱となったのが、池島炭鉱である。1950年代より島の改造を含めた大規模な造成を伴う整備が行われ、海底炭鉱の代表として繁栄し続けてきたこの島も、2001(平成13)年に閉山、それ以降は東南アジアの炭鉱技術者向けの研修施設として、また都市鉱山としての再起の道を図っていたが、それも今は昔の話となった。
炭鉱はその採掘活動を終え、施設の多くは少しずつ崩れ、また草叢に覆われ自然に帰りつつあるが、一部の施設は、三井松島リソーシスが観光坑道として一般見学が出来るようになっている。島を散策すると、共同浴場やかつての炭鉱住宅として使用された団地群が現存しており、とりわけ中層部分に回廊を設けた25号~31号棟の連続社宅群が屹立するさまは、離島とは思えない壮観である。かつて営業していた商店や娯楽施設なども遺っており、戦後復興を力強く支えた炭鉱の姿を見たいと思うなら、早いうちに伺うほうがいいだろう。