勝海舟から始まる近代日本

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978-4-86329-197-3 C0021
定価 2000円 (+税)
2019年11月発行
紹介

海舟が見すえていた近代日本の姿とは。幕末(1800年代)から現代(2010年代)まで、複雑に重なり合う歴史の局面と人間関係を、
海舟を起点にした43人の人物相関図をもとにひも解いてゆく新しい試み。
803年のフェートン号事件を維新の始まりととらえ、
維新の策源地・太宰府、サンフランシスコの精神病院、
軍歌制定の狙い、1912年のオリンピック、
夏目漱石と夢野久作、農本主義、
山本五十六から笹川良一への手紙、
孫文と玄洋社の関係など従来見すごされてきた史実に光をあてて読み直す画期的な一冊。

目次

はじめに
「勝海舟を起点にした幕末から近代における人物相関図」

Ⅰ 勝海舟から始まる近代
勝海舟の野望
第1話 勝海舟が恐れた横井小楠と西郷南洲
第2話 万延元年、勝海舟太平洋を渡る
第3話 勝海舟出世の秘密は蘭学にあり

福岡と薩摩の深い関係
第4話 四人の薩摩藩亡命者を受け容れた福岡藩
第5話 西郷伝説を証明する意義
第6話 安政の大獄で追われる月照の謎の行動
第7話 薩摩藩の富国強兵策としての贋金造り

福岡と長州の人的関係
第8話 加藤司書存命ならば、新時代はどう変化した
第9話 倒幕を決意した円太と高杉晋作
第10話 手に汗握る高杉晋作の福岡藩亡命
第11話 野村望東尼を救出した志士たち

平野國臣の諸国との結びつき
第12話 倒幕の決意を歌に詠む平野國臣
第13話 平野國臣の諸国行脚の陰に手裏剣

福岡藩を取り巻く出来事余話
第14話 維新の策源地・太宰府
第15話 柳川藩の土木技術と海防
第16話 江戸参府でシーボルトは何を知りたかったのか
第17話 長崎街道と砂糖交易
第18話 孝明天皇崩御と伊藤博文暗殺の関係
第19話 適塾塾頭であった大村益次郎と福沢諭吉
第20話 「イカルス号事件」と取調官・大隈重信の役者ぶり
第21話 遣欧使節団が見たサンフランシスコ名物の精神病院
第22話 日本人の牛乳飲み始めは乳母から

Ⅱ 海外の動きの中で考える明治
異なる文明との軋轢
第23話 明治元年の「堺事件」から見えるもの
第24話 慶応三年のキリシタン弾圧の真相
第25話 榎本武揚の外交感覚と商魂

西郷の憂鬱
第26話 いまだ決着をみない征韓論争
第27話 征韓論に火を点けた半井桃水
第28話 南洲墓地の北を向く墓碑
第29話 明治三十六年 盛岡高等農林学校に始まる近代農業
第30話 西南戦争の史跡と明石元二郎の墓

内憂外患
第31話 不平等条約下で起きた長崎事件
第32話 北海道開拓と志士、そして民権論者
第33話 歴史の襞に封印される定遠館
第34話 軍歌制定の狙いとは
第35話 亡命者の定宿・常盤館
第36話 大陸踏査の資金源は目薬
第37話 中国革命とリンゴのつながり

暴力か正義か
第38話 大隈重信と玄洋社
第39話 李鴻章を診察した内務省衛生局医師・中浜東一郎
第40話 星亨と原敬、そして足尾鉱毒事件
第41話 伊藤暗殺の真の標的は外交官の川上だったのか
第42話 修猷館投石事件と手裏剣

西洋文明を吸収し応用する
第43話 漱石の恩師・杉浦重剛
第44話 帝国憲法とベルの電話機
第45話 日本海海戦と日米野球

近代化の陰で
第46話 東郷と乃木とをつなぐ棗の樹、そして社標
第47話 オッペケぺーの川上音二郎はスパイだったのか
第48話 一九一二年(明治四十五)のオリンピック
第49話 漱石と久作の文明批評

Ⅲ 大正は明治の精神を生かしたか
日本流の近代化
第50話 乃木希典の自決
第51話 江藤新平とアジア主義
第52話 西郷が熱望したハム・ソーセージのレシピ

変わらない人間の本質
第53話 右翼の巨頭は甘い物好き
第54話 カリーは恋と革命の味
第55話 西洋近代の本質を見抜いた久作
第56話 寺田寅彦の考える近代と天災
日本と世界の結びつき
第57話 アインシュタインとタゴールの願いとは
第58話 教会と原敬の関係から見えるフランスの陰
第59話 孫文の演説からアジアの玄関口を意識する
第60話 中国革命の滔天を支えた玄洋社はどこに

Ⅳ 「日本人」を見失いかけた昭和
国の根幹はどこにあるのか
第61話 農本主義の本質と実践
第62話 JR二日市駅長・佐藤栄作
第63話 権藤成卿の農本主義
第64話 頭山満と廣田弘毅の名を刻む手水鉢
第65話 原田観峰のお手本から学ぶ精神性

命を賭けるとはどういうことか
第66話 孫文の親友・末永節をめぐる人々
第67話 昭和二十年七月十日と十二月八日
第68話 山本五十六から笹川良一への手紙
第69話 朝鮮戦争と福岡
第70話 出光佐三と東郷平八郎
第71話 ボクシングと演歌がもたらしたフィリッピンとの友好
第72話 三島由紀夫と西郷隆盛の関係

アジアを視野に入れた思想系譜
第73話 引揚港・博多と二日市保養所
第74話 一九六四年・東京オリンピックの使命とは
第75話 愛新覚羅溥儀が好んだチキンラーメン
第76話 中国革命の故郷・福岡
第77話 アンパンマンは日中提携のシンボル
第78話 東亜同文書院・院長の大内暢三と定遠館
関連略年表
あとがき /主要参考文献 /主要人物索引

著者

浦辺 登

うらべ・のぼる

昭和31年、福岡県生まれ。福岡大学卒。日本近現代史を中心に研究、執筆、講演、史跡案内を続けている。著書に『太宰府天満宮の定遠館―遠の朝廷から日清戦争まで』『霊園から見た近代日本』『東京の片隅からみた近代日本』『アジア独立と東京五輪―「ガネホ」とアジア主義』(以上、弦書房)。

弦書房より発行の関連書籍

明治四年・久留米藩難事件
太宰府天満宮の定遠館
玄洋社とは何者か
東京の片隅からみた近代日本
アジア独立と東京五輪
霊園から見た近代日本