file74 愛岐トンネル群

市原猛志

【1900年/愛知県春日井市玉野町/煉瓦造トンネル】

赤煉瓦ネットワークに参加している組織の多くは、何らかの形で建築の活用にかかる団体が多いが、赤煉瓦を使用した施設には土木構造物も存在する。土木構造物に関連する団体も赤煉瓦ネットワークに参画しており、そういった団体の中でもかねがね見たかったところのひとつとして「愛岐トンネル群」があった。この名称は、明治末期に開通し1966(昭和41)年まで使用されていた旧中央線のトンネル群に対して、愛知県と岐阜県の県境にまたがることから便宜的に付けられたもので、正確には個別のトンネル名が存在する。秋の行楽シーズンであったこともあり、大勢の観光客が訪れているなかで、トンネルのポータルやキーストーンをじっくり撮る作業はなかなかに困難が伴った。当日は地場産のお土産類や弁当、地ビールなどが売られているスペースがあり、産業遺産、とりわけ廃線軌道敷と行楽シーズンとの親和性を強く感じた。このトンネル見学のさなかに、田川市立石炭・歴史博物館安蘇館長の訃報を受けた。世界遺産構想が具体化する以前からたびたびお世話になっている方々が次々と物故していくことに一抹の寂しさを覚える。
 
 
 

▲愛岐トンネル公開部分入り口

 
 

▲トンネル内部の一部は暗くなっており、足元に注意が必要

 

▲紅葉シーズンで多数の観光客が廃線散策を楽しんだ