市原猛志
【1912年・2015年復元再築/新潟県糸魚川市/煉瓦造平屋建】
平成の世の中にあって、まさか「大火」という言葉が、地震に伴う災害以外で起こりうるものだとは、思いもよらなかった。2016年12月22日に発生した糸魚川市の大規模火災は、死者こそ出さなかったものの、数多くの歴史的建造物が消失の憂き目にあった。私が訪れたのは、復興の槌音が響き始めて間もない火災一年後、東京での学会理事会のついでに立ち寄った。
火災後の市街地整備が進む中で、駅の南口にワンスパン分移築保存されているのが、かつての煉瓦造機関車庫である。かつては駅のホームから容易に見ることができた、象徴的な建物であったが、北陸新幹線の整備に伴って惜しくも解体された煉瓦造施設であった。市民による保存運動の成果もあって、建築された駅舎に取り込まれる形で保存されている。保存のされ方についてはどうしても賛否が分かれるところとならざるを得ないが、大火後の市街を見つめる形で、糸魚川の精神的な象徴にふさわしい施設となっていってほしい。