file87 西福寺楼門

市原猛志

【昭和初期/佐賀県武雄市/鉱滓煉瓦造楼門】
武雄市で楼門を見に行く、と言えば、100人のうち100人が武雄温泉楼門を想像するだろう。しかしながら、武雄市にはもうひとつ、私にとって重要な楼門が存在する。国重要文化財の楼門から西に徒歩10分ほどのところにある西福寺は、長崎街道筋からは少し離れたところにある浄土宗の寺院であるが、ここには八幡製鐵所で生産された鉱滓煉瓦で作られた組積造の楼門が存在する。
とぼとぼと歩いて訪れると、すっくと立った楼門を見上げる。上層に載っている木造部分を見なければ、中世ヨーロッパの城郭のたたずまいを覚える。寺院に設けられた楼門としてはある意味異質、ではあるのだが、そもそもの武雄温泉楼門自体が異質の塊のようなものなので、こちらの建物の方が後で作られたこともあり、こういった形もありなのかな、と思えてしまうから不思議である。近代建築好きなら武雄来訪時に見ていただきたい、和洋折衷の作品であるが、わざわざ見に行く人間は、まだ私くらいしかいないかもしれない。

 
 

▲和洋混淆のデザインを持つ西福寺楼門

 
 

▲鉱滓煉瓦造の下層アーチ部分

 
  

▲境内には、大正5年に作られた六角堂も現存