【昭和戦中期/長崎県大村市/コンクリート造掩体設備】
公園で遊ぶ、という習慣がなくなってからしばらく経つ。そんな私があえて公園を訪れる時は、その公園に産業遺産が所在する場合がほとんどだ。長崎県大村市は陸軍の部隊が早くから置かれ、明治期の建物も遺る中で、住宅地のただなかにある公園を訪れた。
近年の公園遊具は安全性重視の中で、プラスチック(FRP)製のものが多いのだが、こちらにはコンクリート造りの小山が置かれている。これがもともと飛行機の格納用に作られた掩体設備であったのだ。小山の頂上部からばっさり切り取られ、半ばふさがれた掩体部分には扉が付き、公園の用具置き倉庫に転用。対して反対側のなだらかな傾斜部分には階段と滑り台が取り付けられ、子供の遊具としている。頂上部分は三方を柵で取り囲み、展望台のようにしており、いかにも子供が喜びそうな仕上げになっている。この転用方法は、なるほどよくも考えたものだ、と感心してしまう。九州でも有数の平和利用がなされた「戦跡」といえるだろうか。