紹介
近代化が進んでいく中で、じわりじわりと壊され続けてきた、さまざまな共同性(人と人の絆、人と自然の調和、自己の中にあるべき心と体の交流)をどうすれば取りもどせるのか。思想家としての石牟礼道子のことばを糸口に、もうひとつのあるべき新しい近代へのの道を模索した一冊。本書では、石牟礼の著作の頂点に立つ『天湖』と能「不知火」に注目し、「私」ではなく「私たち」が対立をこえて、他者も自然も含めてどのように和解し共に救済されうるのかを問い直した啓蒙の書である。
目次
【Ⅰ】知と思想の構造転換―近代を超えて
認識と表現の方法/石牟礼道子の思想形成
【Ⅱ】和解と「存在」の回復
夢と現(うつつ)の和解――「橋掛り」/和解と救済
【Ⅲ】共同救済とその方法―共同性の再興
共同救済の方法――悶え神、道行き、徳の共同性
【Ⅳ】共同救済の文学と政治
共同救済の文学/脱近代の政治
【補】石牟礼道子と文学の力
フクシマからミナマタへ/いのちを灯す存問
◉石牟礼道子研究をめぐって
著者
岩岡 中正
いわなか・なかまさ
昭和23年、熊本市生まれ。熊本大学名誉教授、博士(法学)、俳誌「阿蘇」主宰。著書に『詩の政治学―イギリス・ロマン主義政治思想研究』『石牟礼道子の世界』『ロマン主義から石牟礼道子へ』『虚子と現代』『子規と現代』。句集に『春雪』『夏薊』『相聞』。
弦書房より発行の関連書籍
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