忘却の引揚げ史
泉靖一と二日市保養所

四六判/340頁/並製
978-4-86329-155-3
定価 2200円 (+税)
2017年7月発行
紹介

戦後日本の再生は、ここから始まる。
いわゆる戦争問題は、本土大空襲、原爆、沖縄戦を中心に語られることが多い。さらに、戦後史の重要問題として、「敗戦後の引揚げ」があるが、この問題はほとんど研究対象にならず忘却されてきた。
本書は、戦後最大の戦争犠牲者=引揚げ者の苦難のうち、大陸でソ連軍等から性暴行を受けた日本の女性たちを救護(中絶処置、性病治療)し、戦後を再出発させた人々に光をあてた労作。さらに、その中心人物で、〈災害人類学〉の先駆者・泉靖一を再評価する。

目次

【目次より】

第1章 「二日市」からの旅
   佐世保の光景/福岡市の無関心

第2章 二日市保養所の真実
   二日市保養所の誕生/『水子の譜』の衝撃

第3章 証言と「問診日誌」
   敗者の沈黙/波多江兄妹の証言

第4章 泉靖一という男
   植民地二世・泉靖一/朝鮮版ジブリの世界

第5章 泉靖一の闘争
   敗戦前夜の予言/京城帝国大学

第6章 聖福寮の山本良健
   引揚孤児施設「聖福寮」/聖福寮とYMCA人脈

第7章 石賀信子と保母たち
   「聖福寮」の孤児たち/引揚港・佐世保

第8章 映像の力・上坪隆
   「引揚港・博多湾」/筑豊と戦争を撮る

第9章 次世代へ語り継ぐ
   最大の戦争犠牲者/抑圧された性暴行史

 ◉年表で見る「引揚港博多」の戦前戦後
 
 

著者

下川 正晴

しもかわ・まさはる

1949年鹿児島県生まれ。大阪大学法学部卒。毎日新聞西部本社、東京本社外信部、ソウル支局、バンコク支局、編集委員、論説委員等を歴任。韓国外語大学言論情報学部客員教授、大分県立芸術文化短期大学教授を経て、日本近現代史、韓国、台湾、映画を中心に取材執筆中。
著書『私のコリア報道』(晩聲社)、『忘却の引揚げ史―泉靖一と二日市保養所』『日本統治下の朝鮮シネマ群像』『占領と引揚げの肖像BEPPU』(以上、弦書房)、論文「終戦時の陸軍大臣・阿南惟幾、遺族が語る自決七〇年目の真実」ほか。

弦書房より発行の関連書籍

占領と引揚げの肖像BEPPU
日本統治下の朝鮮シネマ群像