西南戦争(明治10年、1877)を、民衆側、特に戦場となり惨禍を被った人々の側から描く。
西南戦争とは何だったのかを民衆側の視点から徹底して問い直す力作。この戦争がいわば見世物であったこと(新聞、錦絵がよく売れて、芝居の題材にもなった)。さまざまな商売が繁盛し戦争バブルが発生したこと。戦争と並行する形で農民一揆が起きたが、その一揆勢は官軍や薩軍には加わっていないということ。戦争で広まった病気(コレラ、天然痘など)が流行したこと――など、戦場のリアル(現実)を克明に描くことで、「戦争」の本質(憎悪、狂気、人的・物的な多大なる損失)を改めてうったえかける。
【目次より】
第1章 狂気の戦場
「セツダンキカイ」を送れ 他
第2章 動員される民衆(一)
軍夫中のスパイ/軍夫徴募の実態 他
第3章 動員される民衆(二)
土地の接収/家屋の接収 他
第4章 民衆が被った災難
農業ができない/チャイルドソルジャー 他
第5章 見世物としての西南戦争
報道合戦と見世物化/イクサ見物 他
第6章 商魂たくましき民衆
メリヤス業界と製紙業界 他
第7章 西南戦争と農民一揆
顕彰される「戦争」と忘れ去られる「一揆」 他
第8章 西南戦争と病気
コレラという流行病 他
第9章 戦後処理
慰霊体系の成立/靖国神社の成立 他
第10章 西南戦争とは何だったのか
民衆の戦争観/みえない西郷の影 他
長野 浩典
1960(昭和35)年、熊本県南阿蘇村生まれ。1986(昭和61)年、熊本大学大学院文学研究科史学専攻修了(日本近現代史)。歴史研究家・作家。主要著書 『街道の日本史 五十二 国東・日田と豊前道』(吉川弘文館)『熊本大学日本史研究室からの洞察』(熊本出版文化会館)『緒方町誌』『長陽村史』『竹田市誌』(以上共著)『大分県先哲叢書 堀悌吉(普及版)』(大分県立先哲史料館)『ある村の幕末・明治―「長野内匠日記」でたどる75年』『生類供養と日本人』『放浪・廻遊民と日本の近代』『西南戦争民衆の記―大義と破壊』『川の中の美しい島・輪中―熊本藩豊後鶴崎藩からみた世界』『感染症と日本人』『花山院隊「偽官軍」事件―戊辰戦争下の封印された真相』『新聞からみた1918―大正期再考』(以上弦書房)
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