日本統治下の朝鮮シネマ群像
戦争と近代の同時代史

四六判/330ページ/並製
978-4-86329-188-1
定価 2200円 (+税)
2019年5月発行
紹介

日本統治下の朝鮮社会を生き生きと再現した朝鮮映画フィルムが2005年以降、北京の中国電影資料館などで続々と見つかり、日韓の研究者たちに衝撃を与えた。本書は、その制作にかかわった監督、脚本家や俳優の軌跡を通じて、日朝同時代史のリアルな実相を描いた労作。主に、1930年代から1940年代に制作された4本の映画『望楼の決死隊』(今井正監督)『授業料』(崔寅奎監督)『家なき天使』(同)『半島の春』(李炳逸監督)を中心に読み解き植民地朝鮮を当時の人々はどのように見ていたのか、その内実に迫る。

目次

【目次より】

◎第一部 『望楼の決死隊』のミステリー

第一章 満州・朝鮮国境の国策映画

原節子の戦争活劇/監督・今井正と朝鮮/金日成と「歴史の偽造」/「多民族帝国」の虚実/南次郎の墓

第二章 原節子と今井正の謎

原節子「軍国の女神」/植民地の二重構造/「トラジ」の謎解き/藤本真澄の回顧/辛基秀の批判

第三章 戦争と解放、その後

「満映・甘粕」と熊谷久虎/東京空襲を逃げ惑う/興南と水俣病の起源/興南の日本人難民/朱仁奎の献身

◎第二部 朝鮮シネマの光芒

第一章 ベストシネマ『授業料』

朝鮮人小学生の衝撃作/朝鮮初の児童映画/「鮮語」の時間割/『やまびこ学校』への系譜/「生活綴方事件」

第二章 『家なき天使』の墜落

京城のストリートチルドレン/村岡花子との因縁/総督府図書課/朝鮮軍報道部/済州島に行った孤児たち

第三章 「解放」前後の朝鮮シネマ

国策会社の一元支配/李香蘭と金素英/「解放」後の崔寅奎/「慰安婦」と醜聞女優/コロンの子/李創用、日本に死す

◉[年表]朝鮮シネマの社会文化史/朝鮮シネマ人物事典
 

著者

下川 正晴

しもかわ・まさはる

1949年鹿児島県生まれ。大阪大学法学部卒。毎日新聞西部本社、東京本社外信部、ソウル支局、バンコク支局、編集委員、論説委員等を歴任。韓国外語大学言論情報学部客員教授、大分県立芸術文化短期大学教授を経て、日本近現代史、韓国、台湾、映画を中心に取材執筆中。
著書『私のコリア報道』(晩聲社)、『忘却の引揚げ史―泉靖一と二日市保養所』『日本統治下の朝鮮シネマ群像』『占領と引揚げの肖像BEPPU』(以上、弦書房)、論文「終戦時の陸軍大臣・阿南惟幾、遺族が語る自決七〇年目の真実」ほか。

弦書房より発行の関連書籍

忘却の引揚げ史