戦後日本の再生は、ここから始まる。
いわゆる戦争問題は、本土大空襲、原爆、沖縄戦を中心に語られることが多い。さらに、戦後史の重要問題として、「敗戦後の引揚げ」があるが、この問題はほとんど研究対象にならず忘却されてきた。
本書は、戦後最大の戦争犠牲者=引揚げ者の苦難のうち、大陸でソ連軍等から性暴行を受けた日本の女性たちを救護(中絶処置、性病治療)し、戦後を再出発させた人々に光をあてた労作。さらに、その中心人物で、〈災害人類学〉の先駆者・泉靖一を再評価する。
【目次より】
第1章 「二日市」からの旅
佐世保の光景/福岡市の無関心
第2章 二日市保養所の真実
二日市保養所の誕生/『水子の譜』の衝撃
第3章 証言と「問診日誌」
敗者の沈黙/波多江兄妹の証言
第4章 泉靖一という男
植民地二世・泉靖一/朝鮮版ジブリの世界
第5章 泉靖一の闘争
敗戦前夜の予言/京城帝国大学
第6章 聖福寮の山本良健
引揚孤児施設「聖福寮」/聖福寮とYMCA人脈
第7章 石賀信子と保母たち
「聖福寮」の孤児たち/引揚港・佐世保
第8章 映像の力・上坪隆
「引揚港・博多湾」/筑豊と戦争を撮る
第9章 次世代へ語り継ぐ
最大の戦争犠牲者/抑圧された性暴行史
◉年表で見る「引揚港博多」の戦前戦後
下川 正晴
1949年鹿児島県生まれ。大阪大学法学部卒。毎日新聞西部本社、東京本社外信部、ソウル支局、バンコク支局、編集委員、論説委員等を歴任。韓国外語大学言論情報学部客員教授、大分県立芸術文化短期大学教授を経て、日本近現代史、韓国、台湾、映画を中心に取材執筆中。
著書『私のコリア報道』(晩聲社)、『忘却の引揚げ史―泉靖一と二日市保養所』『日本統治下の朝鮮シネマ群像』『占領と引揚げの肖像BEPPU』(以上、弦書房)、論文「終戦時の陸軍大臣・阿南惟幾、遺族が語る自決七〇年目の真実」ほか。
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