市原猛志
【桜宮橋(1930年竣工)大阪市北区/都島区】
産業考古学会の見学会もいよいよ終盤、日も暮れかかった大阪の旧淀川を跨ぐ国道1号線を渡り、ゴールである旧桜宮公会堂に向かう。その際に利用する優美な橋が、桜宮橋である。土木構造物の設計は従来、専門の土木設計者が担当することが一般的であるが、こちらの橋は例外的に建築家が担っており、当時の関西における建築界の重鎮であった京都帝国大学の武田五一によって、橋のアーチ部分の真ん中と両端部分にヒンジ(丁番)を設けるという珍しい中路アーチ橋が設計された。橋を構成する鋼材同士を緊結するために取り付けられたリベットが重厚感を見せるとともに、橋の荷重を支えるアーチが優美なシルエットを見せている。これこそまさに機能美と言えよう。
「銀橋」との通称でも知られる桜宮橋は、交通量の増加とともに橋を架け替えるもしくは拡幅するという選択肢を求められ、議論の結果橋の保存が決定、2006年に隣地に新桜宮橋が竣工した。こちらの設計も関西出身の建築家である安藤忠雄が担当しており、八百八橋とも例えられる大阪の河川景観に新たな魅力として加えられた。