file62 東京大学本郷キャンパス

市原猛志
 
【1877年~/東京都文京区/煉瓦造・鉄筋コンクリート造施設群】
 
 日本機械学会の機械遺産認定式は毎年8月7日に開催されるが、この日は「機械の日」となっている。これは旧暦の七夕に相当する日だが、織姫の機織機をメカニカルにとらえなおし、機械が登場する物語の始まりとみなしているところが実にロマンティックである。
 同機構や機能という意味で戦前期の国立大学のキャンパスをとらえなおすことは、非常に難しい。一定のキャンパス計画にのっとって建物配置を計画し、導線を確保しようと試みながらも、予算の関係上計画した建物が計画された時期にできるとは限らず、担当が変わるなどの理由で統一したデザインが常に行われるとは限らない。そのような状況下の中で、東京大学本郷キャンパスの建物群は、内田式ネオゴシックとも称される統一された建築コードで構成された建物群が多く遺る。後年になって建てられた建物群もまた、この内田祥三が編み出したデザインコードを尊重し、または一部取り込んだ形での増改築を行うことで、キャンパスの景観を維持し続けている。
 
 
 

▲ネオゴシックの代表例である安田講堂

 
 

▲医学部と共通のデザインを持つ理学部2号館

 
 

▲車寄せの連続アーチが特徴的な農学部3号館