市原猛志
【1889年/福井県小浜市/土蔵造2階建】
小浜市での宿泊後、敦賀での集合時間までまだ若干の時間があったので、小浜市街を少し散歩することにした。日本海沿岸の町並みは、戦後の高度成長期における太平洋ベルトの大規模な開発に巻き込まれなかったこともあって、古くからのたたずまいが残っていることが多く、歩いていると思いがけず自分自身が想像していなかったような建物を「発見」することもある。
こちら白鳥会館は、赤煉瓦ネットワーク的には有名な物件で国の文化財にも登録されているのだが、これだけを目当てに小浜市を訪れる方はまれだろう。もともとは薬品の製造販売に使われた店舗兼倉庫で、典型的な瓦屋根を持ち、建物を構成するほとんどの部分が土蔵造で作られているのだが、窓廻りに赤煉瓦が使用されているだけで、急に近代の色合いを帯びてくるから実に不思議なものである。赤煉瓦の形状も、通常成型ではない役物煉瓦を使用していて、赤い花が咲いたかのような窓を覆う丸みを帯びた煉瓦と白壁とのコントラストが見る者の印象に強く残る。