市原猛志
【1905年/福井県敦賀市/煉瓦造平屋建】
赤煉瓦ネットワーク全国大会の会場として使用された敦賀赤レンガ倉庫は、もともとスタンダード石油の倉庫として1905年に建てられた。この建物を含め、敦賀市には現在も歴史的建築が多く所在し、これらを有機的につなぎ合わせることで観光へと結び付けていこうという動きが盛んだ。かつて北前船を介した沿岸交易の拠点であった敦賀は、近代にはいるとロシア航路も設けられるなど、日本海における中心都市のひとつであり、1882(明治15)年には港と琵琶湖とを結ぶ鉄道線も敷設された。この栄華を今に伝える施設が赤煉瓦倉庫であるといえよう。
赤煉瓦の施設で再活用される建物には、倉庫が多い。これは建物内部での耐震補強を含めた活用と部屋配置がやりやすいことが理由として挙げられるが、こちらの施設もまた倉庫の高い天井を配管と耐震補強に十二分に活用した典型的な事例である。敦賀港施設の紹介と、当時の鉄道の繁栄を再現したジオラマ、さらにはレストランでの懇親会までこの建物内で体験し、活用のさまをみることができた。