file75 蒸気動車

市原猛志

【1913年/名古屋市港区/工藤式蒸気動車】

 思えば数奇な運命をたどった車両である。最初にこの車両を見たのは明治村にあったころであった。まだ文系学部生の頃で、産業遺産の中でも車両にはそれほどの関心がなかったこともあるのだが、そもそも展示場所も建築がメインの野外博物館の中でもやや唐突な位置にあり、さらに車両の保護のためにつけられたと思しきコンクリート構造が非常に邪魔で、「写真が撮りにくい」という印象のみが頭に残っていた。
 いつのまにやら車両は名古屋市内に移設の上、JR東海のリニア・鉄道館で目玉展示のひとつにされ、その広々とした展示場内で、装いも新たに展示されている。近くには小さなころに乗っているはずの0系新幹線をはじめとした比較的近年の車両群が並ぶ。取り壊される産業遺産も多い一方で展示手法は多様化していき、近年のものでもその技術史的価値が評価され、展示の列に加わるようにもなった。この蒸気動車は見学後の2019年には国の重要文化財に指定されている。
 
 
 

▲蒸気動車ホジ6014

 
 

▲動輪近くに取り付けられている汽車製造株式会社の銘板

 
 

▲博物館明治村に保存されていた時の蒸気動車(2003年10月)