file80 陸軍金沢偕行社

市原猛志

【1898年/石川県金沢市/木造2階建】

 石川県の中でも金沢市は、戦時中にB29による大規模空襲の被害を受けなかったことから、今でも歴史的な建築群が多く現存する文化都市である。その中で、かつての陸軍第九師団の建築群が続々と活用されている。その筆頭となろうとしているのが、首都機能分散の一環で2020年に金沢市に移される国立近代美術館・工芸館である。移転後の工芸館施設の対象に選ばれたのが、この金沢の陸軍偕行社施設と1968(昭和43)年に隣地移築された陸軍第九師司令部庁舎である。筆者来訪の際はいまだどのような移転のされ方をするのか皆目見当もつかないくらい、ひっそりとした状態であった。
 すでに周囲の建物も閉館時間となる中で、移転改築前の建物群を見ることは自分にとって大きな収穫であったが、もともとが一度移築・曳家されている建物ということもあり、再移築に伴う解体作業を通じ現存する部材を精査するなどしてより価値を高められるような修復方針が、望まれてならない。
 
 
 
         

▲改修工事を控えていた金沢陸軍偕行社

 
 
         

▲隣接し活用される陸軍第九師司令部庁舎