【1915年/佐賀県武雄市/木造2階建楼門】
有名に過ぎる国重要文化財物件なので私があえて記載することもないと思うのではあるが、西福寺楼門(file87)との対比はやっておくべきとの視点から紹介の項目を設ける。竜宮門と呼ばれる形式は、小田急電鉄片瀬江ノ島駅あたりにも用いられているものであるが、こちらの施設もまた温泉という余暇産業を象徴する存在として堂々たる風格を見せている。
楼門二階内部には、四隅に方向性を指し示す干支の排気口が取り付けられている。かつて西日本新聞紙面で東京駅天井に取り付けられた干支との関連性を問われ、「(関連があるとしたら)夢があり、面白い」とコメントしたことがあるのだが、実際は方角を表現する存在としての十二支がたまたま武雄と東京でそれぞれに用いられたという偶然が重なっただけ、と考えている。偶然ではあるのだが、設計者辰野金吾の日本的意匠へのこだわりが発露した結果とも言え、今は起こるべくして起こった東京駅との縁なのかな、と思っている。