天然痘、コレラ、スペインかぜ、ハンセン病、そして新型コロナウイルス。本書は、これら感染症を医学、生理学、衛生学的に扱ったものではない。過去と現在の感染症の流行が、社会や人間の行動にどのように影響を与えたかをみるものである。
本書の特徴は、個々の感染症の流行をみるときの切り口(視点)の独自性にある。感染症との付き合い方、さらに感染症と戦争・衛生行政・差別・貧困などの諸問題をどのように乗り越えて行けばよいのか、を具体的な事実を明示しながら提案した労作。
第一章 天然痘(てんねんとう)と種痘―絶望と「歓び」―
疱瘡神・疱瘡祭・錦絵/天然痘の病状と経過
第二章 明治一〇年のコレラ流行―戦争と感染症―
コレラの日本初上陸/千葉県のコレラ一揆
第三章 明治一二年のコレラ大流行―「文明」と「蒙昧(もうまい)」のあいだ―
別府温泉と感染の拡大/コレラ祭という伝統的民俗儀礼
第四章 スペインかぜ「猖獗(しょうけつ)」なり―パンデミックの現実―
スペインかぜのウイルス発見/多難な一九一八(大正七)年
第五章 ハンセン病―偏見・差別・隔離・隠蔽―
高群逸枝がみたらい者/四国の浮浪らい(「乞食遍路」)
終章 新型コロナウイルス感染症――コロナ危機でみえたこと――
格差と貧困と感染症/「一九一八」と「二〇二〇」 ほか
長野 浩典
1960(昭和35)年、熊本県南阿蘇村生まれ。1986(昭和61)年、熊本大学大学院文学研究科史学専攻修了(日本近現代史)。歴史研究家・作家。主要著書 『街道の日本史 五十二 国東・日田と豊前道』(吉川弘文館)『熊本大学日本史研究室からの洞察』(熊本出版文化会館)『緒方町誌』『長陽村史』『竹田市誌』(以上共著)『大分県先哲叢書 堀悌吉(普及版)』(大分県立先哲史料館)『ある村の幕末・明治―「長野内匠日記」でたどる75年』『生類供養と日本人』『放浪・廻遊民と日本の近代』『西南戦争民衆の記―大義と破壊』『川の中の美しい島・輪中―熊本藩豊後鶴崎藩からみた世界』『感染症と日本人』『花山院隊「偽官軍」事件―戊辰戦争下の封印された真相』『新聞からみた1918―大正期再考』(以上弦書房)
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