幼年期・幼少期の回想からよみがえる、失われた昭和の風景と人々の暮らしを描いた、円熟期70代のエッセー集『花いちもんめ』。刊行からおよそ20年経った現在も、独特の世界観が多くの人々を惹きつけ、繋ぎ続ける。本書は、石牟礼道子を慕って水俣に集まった若者たちの力も加わり充実したものになった。巻末エッセイは、石牟礼がかつて暮らした水俣の家で昨年開業した書店「カライモブックス」を営む奥田夫妻。本文写真は、明神岬(水俣湾と不知火海を隔てる入江)の定点観察を続ける写真家・森田具海氏による。
Ⅰ
渚
さくら貝たちのように
泉の神様
となり
河童おとし
渦
別れ
花いちもんめ
Ⅱ
長雨
抜き衣紋
髪結いさん
思慕
蛍
「無常の使い」
おこげのお握り
Ⅲ
後ろの正面だあれ
夕餉の酒と父の歌と
灘の酒樽
海を渡ってきた魂
踊り足の黒鞄
地面のしめった秋の日に
「用意、どん」の旗
花おべべ
馬の神様
御火焼き
咽喉を撫でられる黒猫
豚革の靴
Ⅳ
泣きなが原
狐の仔が
命の奥のご来迎
魔法の苑
木戸銭は、からいも
祈り倒れる
古代の風
下駄や、仏さまがぷかぷか
テレビの反乱
Ⅴ
乳呑み子のいる家
猫ロボット
猫エプロン
花扇
神さまのお楽しみ
大地の眸
視るだけの人
心の宇宙へあと戻り
あっちから
いちばんの魔法
学者女房に「有頂天」
Ⅵ
早苗田が匂う
醜い日本人
椎の子
赤子の記憶
もみじの掌で拝む
紅葉を想う
くたくたの名品
残りの夢
生き方のけいこ
太古の内海――あとがきにかえて
白浜の家 奥田直美(カライモブックス)
水俣大橋まで、あと五分 奥田順平(カライモブックス)
石牟礼 道子
1927年、熊本県天草郡(現天草市)生まれ。
1969年、『苦海浄土―わが水俣病』(講談社)の刊行により注目される。
1973年、季刊誌「暗河」を渡辺京二、松浦豊敏らと創刊。マグサイサイ賞受賞。
1993年、『十六夜橋』(径書房)で紫式部賞受賞。
1996年、第一回水俣・東京展で、緒方正人が回航 した打瀬船日月丸を舞台とした「出魂儀」が感動を呼んだ。
2001年、朝日賞受賞。
2003年、『はにかみの国 石牟礼道子全詩集』(石風社)で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。
2014年、『石牟礼道子全集』全十七巻・別巻一(藤原書店)が完結。
2018年2月、死去。
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《新装版》 ヤポネシアの海辺から | |
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預言の哀しみ | |
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石牟礼道子<句・画>集 色のない虹 | |
石牟礼道子全歌集 海と空のあいだに | |
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