金原理(国文学、日中比較文学研究)と清水孝純(ロシア文学、特にドストエフスキー研究)という二人の碩学門下の研究者たちによる本格的な比較文学論集。安部公房、芥川龍之介、漱石、司馬遷、プルースト、ドストエフスキー、小林秀雄等を軸に、最新の比較文学比較文化論を展開する。〈目次から〉安部公房の満洲表象と実存主義/植民地文学としての台湾シュルレアリスム/憂国の夢——夏目漱石『夢十夜』「第七夜」を中国語訳から読む/後藤明生のドストエフスキー受容/植民地主義批判の逆説——佐藤春夫『上海』論/他
Ⅰ 論考篇
1 日本近現代の文学と植民地
安部公房の満洲表象と実存主義―短編小説「飢えた皮膚」における植民地主義批判………大場健司
植民地文学としての台湾シュルレアリスム―楊熾昌「檳榔子の音楽=ナタ豆を喰ふポエテツカ=」について………賴怡真
植民地主義批判の陥穽―佐藤春夫「上海」論………李天然
芥川龍之介「桃太郎」の〈南〉表象………藤原まみ
2 日中近代の文学と翻訳
近代中国アマチュア演劇運動における日本文学―康友訳、菊池寛「玄宗の心持」を例として………陳竹
憂国の夢――夏目漱石『夢十夜』「第七夜」を中国語訳から読む………西槇偉
銭稲孫の『神曲』翻訳について………稲森雅子
3 中国古典と日本、朝鮮
司馬遷『史記』「伯夷列伝」を通した中島敦「弟子」―天への疑問に着目して………荒木雪葉
『先哲叢談』等に見える朝鮮通信使記事について―江戸文人のまなざし………石川泰成
4 日本文学とフランス、ロシア
マルセル・プルーストに反論する?
――平野啓一郎『マチネの終わりに』における『失われた時を求めて』に対する言及………林信蔵
後藤明生のドストエフスキー受容―講演「百年後の小説家として」(一九八一)の分析から………松枝佳奈
越境する演劇―小山内薫の新劇運動とロシア………溝渕園子
『魔の山』のサタニズムを巡る一考察―ベルジャーエフを手掛かりに………大谷幸太郎
Ⅱ 随想篇
比較文学研究の未来に向けて………西成彦
金原先生のおおらかさ………森田直子
金原理先生を偲ぶ………朴美子
金原先生の憶い出………小田桐弘子
金原理先生と熊本大学比較文学研究室………西槇偉
二人の恩師………野田康文
比較文学会九州支部、昔むかーしの話………石橋美恵子
手取り足取り………横尾文子
清水先生との最後の食事………西野常夫
清水先生を偲んで………陳齢
清水先生の読書会………前田知津子
清水先生―研究へのリスペクト………小田桐弘子
清水孝純先生を偲ぶ………大嶋仁
Ⅲ 資料篇
金原理先生 略歴 業績・著作目録
清水孝純先生 略歴 業績・著作目録
日本比較文学会九州支部
2025年に結成70周年を迎える。約60名の会員が九州支部に所属。春と秋の2回、九州大会を開催。支部会員には山口県に在住あるいは在職の方も含む。HP
西槇 偉(にしまき・いさむ)
熊本大学大学院人文社会科学研究部教授。共編著に『夏目漱石の見た中国 『満韓ところどころ』を読む』(集広舎、2019年)ほか。