file22 上田電鉄別所温泉駅

市原猛志
 
【上田電鉄別所温泉駅(1927年頃竣工)/木造平屋建】
 
 上田駅周辺には、かつて繊維産業が栄えていたことなどから、物資の運搬目的などの理由で複数の私鉄鉄道路線があった。それらを運営していた会社が昭和に入ると、いくつかの統合を経て上田丸子電鉄となる。この会社は現在バス事業を抱える上田交通となり、子会社である上田電鉄が唯一の鉄道線を運行している。上田電鉄別所温泉駅は、昭和初期の鉄道の雰囲気を遺す建物であり、歴史ある温泉街の玄関口としての旅情を醸し出す役割を果たしている。
 別所温泉は、古くは1000年以上遡る歴史と泉質もさることながら、映画やドラマのロケ地としても知られており、その雰囲気に適った建物であるといえよう。駅舎内にはいつの頃から掲げられたかわからないような古くからの広告がつけられており、なるほどロケ地にふさわしい建物である。同じタイプの駅舎がここ上田電鉄線には中塩田駅にも現存しており、見そびれた上田城とともに。今度はこちらも見学にいかねばならないと思っている。
 
 
 
平屋建ての簡素な建物ながら、洋風デザインを施した別所温泉駅

▲平屋建ての簡素な建物ながら、洋風デザインを施した別所温泉駅