file91 ジェームス邸

市原猛志
【1934年/神戸市垂水区塩屋町/鉄筋コンクリート造二階建】
西洋館や洋風住宅と言えば、木造のイメージを強く持つが、神戸市垂水区の、通称ジェームス山と呼ばれる丘の上にあるジェームス邸は、鉄筋コンクリート造の豪壮な洋館である。イギリス人貿易商であるアーネスト・ジェームスが私財を投じて建設した郊外住宅地の中心に自宅として整備した建物で、延床面積は千平方メートルを超える。現代でも富豪邸宅の象徴的存在であるプールもあり、傾斜面を利用した半地下形式のバーなど各部屋が嗜好に富んでいるさまを見ると豪邸というしかない。建物全体としてはスパニッシュスタイルで統一されており、ところどころで印象深く張られているタイルは京都で一世を風靡した泰山製陶所のタイルが使用されている。
南側斜面地であり、その住宅開発地としての土地の魅力から解体の危機もあったが、2012年にもともとの設計・施工者である竹中工務店の手によって改修され、現在では食事とウエディングができる文化財建築となった。今も昔も地域のシンボルとして活用されている。
 
 
 

▲丘の上にそびえるジェームス邸

 

 
 

▲半地下形式になっているルームバー

 
 
 

▲塔屋部床の泰山製陶所製タイル