file92 グッゲンハイム邸

市原猛志

【1908年頃/神戸市垂水区塩屋町/木造二階建】
神戸市兵庫県南部に遺る西洋館は、かつてこの地が外国との交易拠点であったことを如実に示している。中でもこの塩屋地区は、神戸以西の鉄道建設に伴う利便性の向上から、神戸の居留地で働く外国人の方々によって、明治後期より洋風建築が建てられるようになった。この建物もそれらの系譜に属する。神戸在住の森本一家が私財をなげうって購入したことは、地域ではあまりに有名な話だ。近年、グッゲンハイム氏が住んでいたのはこのグッゲンハイム邸ではなかったという、衝撃的な事実が確認されたが、神戸の外国人住宅群のひとつとしての建築意匠としての価値が変わることはないので、建築を取り巻くうんちくのひとつとして、施設利用の魅力に加えられていくことだろう。私は文化資源学会による見学会として訪れ、この後は講演会が予定されていたが、運悪く生駒時計店にて開催予定の自分自身の研究報告会とかぶってしまったため、中座し会場の大阪へと向かうこととなった。
 
 
 

▲グッゲンハイム邸

 
 
 

▲外観に似合わず重厚な階段手摺