弦書房週報 第17号(2010.4.4)

◆水俣病に関する報道が増えてきました。今年の5月1日で、公式確認から54年です。水俣学を提唱した原田正純氏は「水俣病事件に、今も未解決の部分が多いのは多面的な研究がなされなかったから。水俣病の研究は今後100年も200年も続いていく」と語っています。
 新聞報道では、水俣病未認定患者の救済問題が解決に向けて大詰めを迎える、といったことが書かれていますが、本質的なことは何も解決されていません。未認定患者のすべてが「水俣病患者であると認定されること」こそが解決への大前提であるということが忘れ去られてしまうのではないでしょうか。水俣病訴訟が和解することと水俣病問題が解決することとは違うことなのだということをメディアは報道し続けてほしいものです。
『宝子たち《胎児性水俣病に学んだ50年》』(2100円)『なぜ水俣病は解決できないのか』(2205円)

◆博多の街の中を通る唐津街道が改めて注目を集めています。スケッチや写真撮影を楽しみながら散歩してみては。
『唐津街道を行く』

◆日韓の第2期歴史共同研究の報告書が3月に公表されました。共通の歴史認識を持つことはやはり難しい、ということが改めて分かったことがその成果だったといえそうです。朝鮮半島の植民地化から生じた土地の搾取と労働の強制。さらに戦争と石炭産業のために樺太、筑豊、長崎と強制連行された朝鮮人と連行した日本人の歴史に正面から取材を続けてきた林えいだい氏の本『筑豊・軍艦島--朝鮮人強制連行、その後』(2100円)が4月中旬発売です。人間が作り出す歴史の恐さ、哀しさ、たくましさが伝わってくる380点の迫力ある写真とルポで描く労作です。日韓併合100年の節目に出るべくして刊行する一冊です。

(表示定価は全て税込)